(2023/02/26)久しぶりにサイトをリニューアルしました。 (2023/03/01)村上春樹の新作タイトルが発表されましたね。
OPINION

#1 リスキリングにもにゃる

リスキリングって、企業にとっては死活問題ですよね。

 
 先日観た『クローズアップ現代』が、なかなかにもにゃる内容だった。昨今よく耳にする「リスキリング」をテーマにした内容だったのだが、まずもって「リスキリング」の定義が明確でない。前半で取り上げられたのは、山形の税理士事務所のケース。数年前までは派遣社員として受付業務をしていた女性が、社内での「リスキリング」によってITエンジニアに転身。業務の効率化を実現させて、現在は正社員として働いているというもの。

 続いて紹介されたのは、沖縄・糸満市のシングルマザー。これまでダブルワーカーだった彼女は、糸満市が主催する『糸満でじたる女子プロジェクト』に参加。そこで三カ月半にわたってITスキルを学び、現在は東京の大手コンサルティング会社の仕事を請け負っているという。

 山形の税理士事務所のケースも糸満市のケースも、どちらも素晴らしい取り組みであることは間違いない。多くの企業や行政が、あのような支援策を講じてくれるのはいいことだと思う。ただし、両者は根本的なところで異なる。前者は、あくまで社内での福利厚生(?)の一環。後者は行政による就労支援である。はたしてどちらも「リスキリング」と定義して良いものか。僕には判断ができなかった。

 個人的には、リスキリングいうのは、とりわけ中小企業の生き残り戦略のひとつだと考えている。例えば機械部品製造メーカーの多い愛知ではEV化が加速すれば、多くの中小企業が業態を変えていかざるを得ない。その為には社員のリスキリングを促して、新しい業務に対応できる人材にしていかないといけない。リスキリングは企業にとっては、死活問題といっていい。

 にもかかわらず番組では、「リスキリングで収入アップ!」みたいな内容に終始していた。実際のところは、そんなノー天気なものではないと思う。成功事例ばかりでなく、負の部分や、企業側の本音など、もう少し深掘りして欲しかった。

 定義があいまいだと、詐欺まがいの「リスキリング」ビジネスみたいなものが出てくるのではないか。そんな危惧もある(すでにありそうだ)。あと、糸満市のケースでは、ダブルワーカー時よりも「時給」が上がったという表現も気になった。リスキリングしても結局は派遣扱いなのだとしたら、根本的な問題解決を先送りにしているだけのように思える。