(2023/02/26)久しぶりにサイトをリニューアルしました。 (2023/03/01)村上春樹の新作タイトルが発表されましたね。
BOOKREVIEW

『超傑作選 ナンシー関リターンズ』

ナンシー関の失われた二十年

『超傑作選 ナンシー関リターンズ』を読んだ。ナンシー関の傑作選は没後も数多く出版されているけれど、この本の場合、なんといっても目を引くのは表紙に刷られた「生誕60年 没後20年」という文字だ。存命であったとしたらまだ六十歳だったのだ。と同時に、その逝去からもう二十年も経ってしまったのである。その背反するかのような事実に、改めて、戸惑うしかない。

 もしナンシー関が今も生きていたら、現代のテレビ、あるいは芸能界の様子を、どのように眺めていただろう。弱肉強食、浮き沈みが激しいとされるテレビの世界である。ナンシー没後に登場し、人気となった芸能人も数知れない。そんな彼らをナンシーだったら、どうくさすのか――今となっては詮無いことながら、そんなことを思いながらページを読み進めていったわけだが、一読して驚いた。

「第一章 TV・芸能人編」に登場するのは、松田聖子、東山紀之、XJAPNのYOSHIKI、泉ピン子、工藤静香、豊川悦司、木村拓哉、柳葉敏郎など延べ六十人あまりなのだが、その顔ぶれが、二十年経った今でもほとんど変わっていないのである。もちろん「選集」だから、現在の読者にもわかる人物たちをセレクトした、ということはあるだろう。それにしても、である。あまりの変化の無さ加減に、困惑するばかりだ。

 これが良い傾向であるはずもなく、だからこそナンシー関は彼ら(そして彼らを持ち上げるメディアとか視聴者とか)をことあるごとにくさしてきたわけだが、この二十年、少なくともテレビの中の世界では、大きな変化はなかった。その変化の無さが、この傑作選を読むとよくわかる。

 しかし二十年といえば、生まれたばかりの赤ん坊が成人になる(今は十八歳だがそれはともかく)までの年月なわけで、そう考えると、今の若者たちに彼らはどのように映っているのだろうか。気になる。この選集に登場する彼らのほとんどが、今まさに脂がのっている感さえあるからだ。みんなベテラン、下手したら重鎮扱いだ。中山ヒデちゃんとか。はたして若い子らはどのように認識しているのか。気にもしてないのか。